巻頭言2001 巻頭言2003

新入生パンフレット巻頭言2003

きっとある、あなたの居場所。いつか来る、あなたが必要とされる日が。

 あたらしく制御システム工学科の仲間入りをされた新入生、編入生の皆さん、ようこそ。皆さんを心から歓迎します。合格の喜びから、明るい大学生活への期待へと、そして「やっていけるだろうか」という不安が交錯して複雑な気持ちでいることでしょう。そこで、これから何年間かこの大学で過ごされる、sensitiveでvulnerableな皆さんにとって、大学生活の少しのヒントにでもなればと思い、三つお話しします。

1. 「今」に流されず自分を磨く
 10年前、SMAPの中で大きく目立っていたキムタク。かたや、いるかいないか分からないクサナギ君。今、クサナギ君は癒し系と言われながら大きく注目されています。時代が彼を要求しているのと、彼自身、自分の生き方を守ってきたことで、こうなったのだと思います。
 成績が優秀だとか、仕事がデキルだとかで、人は判断されがちです。それは常に誰よりも上、あるいは一番上を目指さなければならない競争を意味します。今まで、皆さんは学校という枠の中で、極めて限られたところでしか通用しない「偏差値」というものさしで評価されてきました。これが実社会に出ると、今度はその組織体の中でしか通用しない別のものさしで評価されます。それらのものさしで測れない場合、評価をうけません。
 確かに、競争によって個人も社会も活性化されます。競争を否定するものではありません。しかし、競争ではなく共存、ナンバーワンではなくオンリーワンも立派な価値観です。用意されたものさしで測ることができなければ、自分で新しいものさしを作ればいいのです。
 大学は、「自分は誰か」、「どこに行こうとしているのか」、自分を見つめ、自分にあったものさしを探すのに、最適な場所と時間を与えます。大学のスタッフは、皆さんのその行為を最大限支援します。不透明な将来でも生きる術を身に付けられるよう、新しいカリキュラムなどの枠組みも用意しています。「今」に流されず、自分を確立していき、その自分を評価してもらえるように、自分を磨くのです。そうすれば、必ずあなたの居場所が見つかります。

2. まわりを見つめる
 どうして私のことを分かってくれないのだろう。こう思ったことはありませんか。自分のやるべきことが見つかって、その成果が出ても、それをまわりの人に理解してもらえないとき、嬉しがってもらえないとき、こうなります。
 人と人とが理解し合うには、お互いに話しているバックグラウンドが共通である必要があります。しかし、相手のバックグラウンドはそう簡単には分かりません。自分のバックグラウンドだって知り尽くしている訳ではないのですから。
 そんなとき、相手を自分に置き換えて自分を見てみましょう。すると、少し分かり始めます。あるいは、自分をその場所から遠ざけて別の場所から見てみましょう。きっと発見があるはずです。
 あなたがまわりに「自分を見て欲しい」と要求する前に、まずあなたがまわりを見つめてみるのです。その上で自分を表現してみる。そうすれば、まわりはあなたを理解できるようになります。そして、いつかきっとあなたを必要とする人があらわれます。

3. 3Cのすすめ
 3Cは、curiosity, crazy, concentrationの3つの頭文字からとったもので、ほとんど同じ意味合いです。「こいつは何だ、今まで知らないけどおもしろそうだ。何か変だ、何が起こっているんだ?」、これを感じ取る心が大切なのです。精神状態をhighにしておきます。そうしておくと、何かおもしろいことが向こうから飛び込んできます。それをつかむのです。つかんだら、誰から何と言われようとかまわない、人の考えない突拍子もないことを想像するのです。大切なのは、常識外れです。思いついたら、没頭して、形にするまで昼夜考え続けてみましょう。
 実際には、そのようなおもしろいものは常にあなたの目の前を通り過ぎていっています。おもしろいと思うか思わないか、そこがチャンスをつかめるかつかめないかの差なのです。
 脳は刺激を受ければ受けるほど、効率的で効果的なネットワークを構成し続けます。休みません。刺激の中に自分を追い込んでみなさい。
 ときどき3.を思い出しながら、1.と2.を心がけてみましょう。そうすれば、きっと出来ます、あなたの居場所が。いつか来ます、あなたが必要とされる日が。

2003年4月1日
学科長 廣瀬英雄

4/18合宿研修を受けた学生へ
廣瀬英雄
5/1/2003

 合宿参加でいろいろな刺激を受けて皆さんは有意義であったと思います。実は、私の話の中では皆さんに「最後のメッセージ」を敢えて話さず中途半端に終わらせ、皆さんが何を感じとろうとする(考える)だろう、ということを期待していました。答えを言ってしまえば、それをコピーして自分の発見にすり替える可能性があるからです。
 「私を変えた一言」ととしていくつかメッセージを入れました。聞き方によれば、内容はただの自慢話です。そうではないのです。恥をさらしながらも、次のたった一つのことを伝えたかったのです。
 自分は自分で自分の周りにカベを作っています。そして、自分の決めた行動範囲や思考範囲の中でぶんぶんと蜂が動き回るように毎日動いているのです。人間は本来自由に飛び回ることができ、その空間をどんどん広げていくと新たな自分を発見できたり、他人を理解できたりするのです。でも、そのカベは自分で作っているために自分からは見えない。カベがあることさえ自分で気がつかないことが多いのです。何かのショックでカベの存在とその向こう側を見たいということに気がつくことがあります。そのとき、「勇気を持って」飛び出すことを考えて下さい。飛んでみれば案外たやすいのです。
 自分が他人に誇れるものを持ちなさい、一番になりなさい。こう言うのは簡単です。誰でも「そうしなきゃ」と思うものです。でも、問題は、一番の問題は、どう頑張ってもあの人にも負ける、そういうことはあるのです。能力は厳然とあるのです。でも、皆さんは、皆等しく誰かの役に立ちたいという気持ちはいっぱいあるのです。トップになれないどころか、目立たない;そんな人は去れ、とは私には言えません。世の中が厳しいのは確かです。厳しい世の中を渡って行くには、自分を売れる何かを持たなければならない。これも確かです。しかし、ときに打ちひしがれることが、打ちのめされるときがあります。4/10に配布されたパンフレットに書いた巻頭言はそんな人のために書いた内容です。そのときには、only oneを探すことを考えたらどうですか、と。
 自分とはこんなものだ、と自分で決めつけず、自分の可能性を周りの人の言葉や行動に敏感に学んでいって欲しいのです。
 組織として問題を解決する手段もあります。それは他の先生が詳しくお話しされました。私は、個人としてどこまで自分を広げられるかという視点からお話ししました。これが、私の皆さんに伝えたかった(敢えて言わなかった)唯一のメッセージです。
 p.s. : e-mailを使って英語の重要性を言っているように感じているとも思いますが、実は、皆さんが日頃勉強している内容は、生き生きとしていて、今日にでも世界の誰かが反応するような、わくわくするようなことつながっているのだ、ということがそこでのメッセージです。

新入生パンフレット巻頭言2001

It's your life.

 あたらしく制御システム工学科の仲間入りをした新入生、編入生の皆さん、ようこそ。皆さんを心から歓迎します。
 大きく期待がふくらむ一方、これからどのように生きたらいいの、と少し不安の交差する気持ちで今日の日を迎えていることと思います。そこで、これから何年間かこの大学で過ごす皆さんにとって、大学生活の少しのヒントにでもなればと思い、ちょっとお話しします。

1. 生きる力
 皆さんは人類史上かつてなかった、きわめて速い変化の中で生きていく、ということを強いられています。Dog yearというヤツですね。その意味で皆さんは、ある意味で得をしています。しかし、その変化の波に追従できないでいると、いつの間にか取り残されていることもあります。この時代の波にのる人とそうでない人との格差が大きく広がる危険な時代でもあるのです。そんな時代をどう生きればいいのでしょう。
 大学は、従来専門知識の伝授を主に行ってきました。しかし、最近、社会の変化の速さに追従できるためには、そのような知識ではなく、変化に対応できる術、言い方をかえると基本的な問題解決力が重要と考えられてきており、社会からもそのような要求があがっています。そこで、制御システム工学科では、皆さんが社会でもまれる前にその練習を授業の中に組み込むという試み(新しいカリキュラム)を他学科に先駆けて用意しました。基礎力とか、問題解決力とかいろいろな言葉が使われますが、何かまとまった知識ではなく、変化や困難な状況に置かれたときに立ち向かう、気力とか、元気さとか、行動力とか、そのような「力」が身に付くようなしくみです。それは、一言で言えば、「経験を通じて体で覚える、生きる力」を獲得するための試みです。皆さんに、この試みの中から「生きる力」を体得してもらうことを心から願っています。

2. 元気のいい人
 「元気のいい人」と聞いて、皆さんどういうイメージを持ちますか。よくしゃべる人、運動のできる人、明るい雰囲気の人、じっとしていなくよく動く人。他にもまだあるでしょうか。しかし、こう解釈することもできます。
 自分の強み、弱みを良く知っていて、自分というものが分かっている。また、自分のやりたい目標や、それに到達するための道のりも知っている。自分の今の状態から、理想とする状態へのギャップが理解出来ており、自分が今何をすればよいか分かっている。これを一言で言えば、「自我が確立されている」。
 自分のやりたいことが社会にどのような影響を及ぼすのか、これもよく分かっている。社会的にどの程度貢献できるのか、誰をhappyに出来るのか、それが分かっている。これを一言で言えば、「社会性が確立されている」。
 この2つのことがバランスよく備わっていると、自然に生きる活力が湧いてくるはずです。「私は誰、どこ行くの」、これがしっかり把握されている人の心理状態を一言でいい表すと、「元気のいい人」になります。自分の行うべきことに対する準備(readiness)が出来ている状態です。
 あるスタート地点に立ったら、当面のゴールを想像してみなさい。そして、ゴールをどのように通過するかを想像してみなさい。目標に達成した晴れ晴れしい姿を想像してみなさい。自分の惨めな姿も少し想像してみなさい。そして、今自分のする事は何なのか考えてみて下さい。
 私は誰、どこ行くの。これを誰にでも明解に説明できるように準備しておくことです。

3. 3Cのすすめ
 3Cは、制御システム工学科らしく、computer, communication, controlの頭文字からとったものではありません。Curiosity, crazy, concentrationの3つの頭文字からとったものです。
 「こいつは何だ、今まで知らないけどおもしろそうだ。何か変だ、何が起こっているんだ?」、これを感じ取る心が大切なのです。精神状態をhighにしておきます。つかんだら、誰から何と言われようとかまわない、人の考えない突拍子もないことを想像しなさい。大切なのは、常識外れです。思いついたら、没頭して、形にするまで昼夜考え続けなさい。Globalizationがすすみ、一層、個が問われる時代。私の皆さんへの大学生活へのヒントは上の3つです。
 人生の中でわずかの時間の大学生生活。それを刺激があって実りある人生への出発点にするのも、退屈で怠惰な人生の曲がり角にするにも、あなたの気持ちしだい。そういう意味では大切な時間です。いい機会です、ここで考えてみませんか。あなたの人生です。

2001年4月1日
学科長 廣瀬英雄