九工大新聞コラム 廣瀬英雄 
2004年度4号 12/18/2004 

授業アンケート結果の公開

 何年か前から、学生の皆さんにご協力いただいて、学部では学期末の終わりに授業アンケートを一斉に行ってきている。これは、最近の社会的な要請(外圧)によるものでもないことはないが、それよりは学部内で教育の質を高めようという教員側からの動きから自然に起こってきた結果である。大学の授業(コンテンツとプレゼンテーション)が改善されるように、学内にはいくつかの委員会が設けられ、その最前線はFD専門部会で審議されてきた。今までは、回収されたアンケート結果のうち、数値データは統計的にまとめられ、記述データはそのままの形で当該の教員に戻され、翌年度等の授業の改善に役立ててもらおうということを行ってきた。また、アンケートの一部(総合評価)を使って、その得点の高かった教員を「Lecture of the Year」と称して、その教員の授業の一部を他の教員にも公開し、お互いに参考にしながら改善を推進するというしくみを考えてきた。
 しかし、すべての講義について同じようなアンケートを書かなければならない、また質問項目も少なくはない、記述式もあると、どうも学生の皆さんには段々つらくなってきたようである。また、フィードバックされるといっても、次年度の授業で自分には直接返って来ないもどかしさもある。更に、まじめに書いてもいっこうに教員の授業は改善されていないではないか、という声も聞かれる。アンケートの回答欄には期待すべき情報量も段々少なくなってきた。その一方で、教員の方々にお聞きすると、「一所懸命にやっている」という答えも返ってくる。アンケートを生きたものにするために、アンケートの内容と方法を改善すべき時期に来ている。
 フィードバックが感じられていない原因には何があるだろうか。数値データをもらっても、他の教員との比較が無ければ、授業が良かったのかそうでなかったのか自分自身では分からないかもしれない。自分本位で評価結果の解釈をしてしまうからである。評価には、絶対評価と相対評価がある。今までは絶対評価だけを使ってきたのでこのようなことになったのではないだろうか。ひとりよがりにならないためには、相対評価も入れなければならないのではない。そこで、今年度後期から数値データについて教職員全員に数値データを公開することとした。ただ、相対評価のためには多くの項目は必要ないと思われるので学生の負担も考えて簡素化する必要があろう。授業科目に特有のアンケート項目もあるかもしれないが、それは絶対評価として授業毎に補っておけばいいだろう。
 技術者は最善を尽くして最高の製品を世に出そうと思いがちである。技術的には明らかに他社より優れている製品を出す企業が、結局は競争に負けて消えていく例は今まで数知れない。製品を使うかどうかは、設計者が決めるのではなくて使う人が決めている。だから、使う人の気持ちが製品には反映されていなければならない。授業も全く同じである。専門的には未熟だからといって学生からの評価を軽視することは宝を捨てるのと同じことである。
 さて、教員は学生から授業料をとって授業を行っている、まぎれもない「プロ」である。それだけのことをしなければならない。その時代にあった授業方法を常に開拓しなければならない。そこで、学生の皆さんにはお願いですが、授業を受ける側も授業の効果が最大限引き出せるように、いろいろな面で教員側に真摯に返して欲しい。授業は、教員と学生とで一緒に作り上げるものだし、授業アンケートは重要なコミュニケーション手段の一つだから。