九工大新聞コラム 廣瀬英雄
2003年度3号 10/21/2003
変わる大学に学生からも参画を
大学の中期目標が公開されている[1]。独立行政法人組織への移行は来年4月。これまで、大学の中では大変な労力と時間を使って大学の改革について議論してきた。その一つの形が中期目標である。新聞からは「大学の顔が見えない」とか、「数値目標がない」とかの批評を受けている[2]が、ともかく大学に携わる大方の教職員が一緒になってまとめ上げたものであり、一つの組織体としてこのような共通の目標を掲げて歩み始めるのは国立大学としては画期的なことなのである。「日本の大学はどうあるべきか」という共通の認識が薄いまま、長年にわたって主に教員個人の活動によって支えられてきた国立大学が、1)研究の重要性だけでなく教育の重要性を大きく唱え始めた[3]、2)また世界に通用する教育の質を保証することが各大学共通の認識になってきた[4]、というように組織体として大きく変わろうとしている。学生のみなさんは今その渦中にいる。
大学の3本柱(研究、教育、社会貢献)の中で、大勢の学生のみなさんに真っ先に関係するのは「教育」である。教育改革については、大学内では、今に議論が始まったわけではなく、何年か前から取り組んできている。たとえば、学生のみなさんが授業の評価を行うことは普通になってきた。あるいは、時代の変化をとらえ、来るべき教育の姿の先取りを行おうとしているところもある[たとえば、5]。ここ数年、教員は教育に費やす時間を確実に増やしているし、また、精密な調査結果が出ているわけではないが、学生のみなさんの授業に取り組む姿勢の最近の変化も肌で感じられる。ただ、これは厳しい時代のせいかもしれない。
さて、教育の中核は授業である。授業をより良いものにするには、授業に参加する学生のみなさんの参画なしには望めない。「授業を受ける」ではなく、「授業に参加する」という表現を用いたのは、授業はライブであり、パフォーマンスであり、それを実りあるものにするためには、そこに参加した全員が授業というものを作り出すべき性格を持つからである。授業にみなさんからの反応がなければ授業は改善されない。みなさんからいただいた反応に教員が応えなければ、反応そのものも消滅してしまう。
期末試験の直前に行う「授業評価アンケート」は形としては定着してきた。しかし、教員の授業改善の方向性に参考になるような豊富な意見はそれほどない。授業がいっこうに改善されないからかもしれない。直接自分に見返りがないからかもしれない。あるいは、アンケートに疲れているのかもしれない。しかし、きちんと答えてくれるアンケートは教員にとって貴重なのである。どうしたら生きたアンケートになるか、例えばアンケートの質問内容を自分たちで考えてみるとか、教員と一緒に考えて、活き活きした授業を作り上げたいと考えている。
Lecture of the Yearという制度ができた。4年生のみなさんに、4年間で一番良かったと思う教員の名前をあげてもらい、優秀な授業を行った教員には励みとなり、また模範授業の公開を行ってもらうことで、より良い授業の数を増やそうという試みである。残念ながら、これにもアンケートに答える学生のみなさんの数がそれほど多くないように思われる。
授業アンケートに限らない。学部長との懇談会など、教員と学生のみなさんとが一緒にアイデアを出し合って、自分たちの共同組織である大学を創り上げていくように、小さなところからでも大学改革に参画しませんか。
参考文献:
[1] http://jimu-www.jimu.kyutech.ac.jp/
[2] http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20031016AT1G1601T16102003.html
[3] http://www.asahi.com/edu/tenki/TKY200307110287.html
[4] http://www.jabee.org/
[5]「もう進行中です。先駆的カリキュラム!」, 明専会報2003.1、19-21、明専会 (2003.1) 平成14年1月号 |